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研修医コラム

当院で研修中の先輩医師や指導医が秋田県医師会報『秋田医報』や秋田市医師会報に投稿したのでご紹介します。

Resident column

うんこカローラ

診療部長 阿部 利樹

"うんこカローラ"は当時、祖父の形見として私の兄が乗っていた車です。別にうんこがついているわけではなく、うんこ臭いわけでもなく、ただ色が黄土色だったので、みんなが"うんこカローラ"と呼んでいただけです。 カタログ上の色はクリーム色だったのですが、どう見てもうんこ色にしか見えなかったので、そう呼ばれていました。

昭和62年、私は秋田大学に入学しました。親元を離れ、初めての一人暮らし、すべてが輝いて見えました。退屈な一般教養の授業もそこそこに、せっせとモータースクールに通いました。夏休み前には絶対免許を取って、ピカピカの新車で看護学校のカワイ子ちゃんとドライブ行くぜー!テンション上がりまくりでした。

私は仙台の開業医の次男坊で、いわゆるボンボンであります。入学祝いとしてかっこいいピカピカの新車を買ってもらえるものだと、勝手に思い込んでおりました。

当時はレビン、トレノ、いわゆる"86"が大人気な時代でした。バイクでディーラーをまわり、カタログを集めて研究に研究を重ねました。これしかない!夏休みにウキウキしながら実家に帰りました。家族会議です。

結果。兄はレビン、私は"うんこカローラ"(/_;)

カワイ子ちゃんとドライブ行けなーい(;∀;)。

"うんこカローラ"は祖父、兄と10年以上乗られてきました。だいぶくたびれてきており、そろそろ廃車の時期でした。しかし、そこはさすがに世界のトヨタ!外装はくたびれても、エンジンはまだまだ元気で十分走れる、というのが理由でした。

私は男3兄弟の真ん中です。幼いころから、兄は長男で大切に育てられ、当然なんでも新品を買ってもらえます。次男坊は必然的にお下がり。末っ子はみんなに可愛がられ、お下がりもそろそろボロボロになり、新品。そんな不公平な、差別的な法則が我が家にはありました。

夏休み明け、兄は新車のレビンでカワイ子ちゃんとドライブ。私のもとに"うんこカローラ"がやってきました。何とも言えないボディーカラー、ところどころ塗装が剥がれ錆がうき、エアコンなし、カーステなしラジオのみ、パワステ、パワーウィンドウなし、もちろんマニュアルでしたが、走りは元気でした。

初めてのドライブは本荘マリーナでした。7号線はまっすぐでカーブが少ないので、初心者にはうってつけのドライブコースです。当然、助手席はカワイ子ちゃんではなく部活の先輩です。田沢湖、男鹿半島、十和田湖、あちこち先輩を乗せてドライブしました。

秋、だいぶ運転にも慣れて小路もスイスイ飛ばしていたところ、助手席側をガリガリッΣ(・□・;)、「あちゃー(/_;)」、ドアがへこみ、大きな傷がついてしまいました。学生ですので修理代もありません。へこみは学生思いの板金屋さんにお願いして吸盤みたいな道具で引っ張ってもらい、なんとなく直してもらいました。 もちろんタダです。しかし、傷は塗装しないと無理だ、と言われて困り果てていました。ある日、ホームセンターで「もしかして、これつかえるんじゃねー?」、ガムテープです。ガムテープはまさに、うんこ色! さっそく貼ってみました。 ぜんぜんわからなーい((´∀`))!じっくり見ないとガムテープだなんて誰も気づかなーい! 最高の修理アイテムを手に入れました。その後も錆びた部分や塗装の剥がれた部分をガムテープで補修し、いつの日か、"うんこカローラ"にも愛着がわいてきました(^v^)。

翌年、梅雨のある日に異変が現れました。なんとなく車内が湿っぽいんです。ブレーキをかけると、足が濡れるんです。"これはただ事ではない"と思い車内を見わたすと、なんと!後部座席の床に水たまりができているではありませんか! ブレーキをかけるたび、慣性の法則で水たまりが運転席の下を通って、私の足元まで移動してきていたのです。 とりあえず、水を汲み出しましたが、雨の降った翌日には同じ現象が起こりました。雑巾で拭き取ったり、コップで汲み出したり、灯油を移し替えるスポイトのような器具も使いましたが、きりがありません。そんな水たまりとの格闘が何週間も続きました。それがある日忽然と消えたのです。乾季で湖が干上がるように消えたのです。 恐る恐るカーペットをめくってみると、なんと、床に大きな穴が開いておりましたΣ(・□・;)。錆びた床面に穴が開いて排水口ができていたのです。その日から"うんこカローラ"は3人乗りになりました。

そんな私の愛車"うんこカローラ"とも、とうとうお別れの時がやってきました。弟に受け継ぐ時が来たのです。夏休み、例によって家族会議が行われました。

結果。弟はレビンΣ(・□・;)。

あちこちガムテープで補修されている"うんこカローラ"を見た両親は、この車ではあまりに弟がかわいそうだと思った?らしく廃車にすることを決意したようです。ここでもあの不公平法則は成り立っていたのです。

あれから二十数年たちました。現在"うんこカローラ"から数えて6台目の愛車に乗っています。ある日書店で"人生最後に乗るクルマ"という雑誌が目にとまりました。"人生最後に乗るクルマ、あなたは何を選びますか?"という問いかけに、少年のころ憧れたビンテージカー?最先端技術のスーパーカー?ひょっとすると次に買い替える車が人生最後の車になるかもしれません。 たとえそれがどんなにすごいクルマであろうと、"うんこカローラ"が私の一番の愛車であることには変わりないと思います。

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